要旨:『源氏物語』が十一世紀初頭、宮廷に仕えた女流作家、紫式部によって書かれた長篇であり、「世界最古の長篇小説」と呼ばれ、日本文学史上最高の傑作とされる王朝物語である。物語は、主人公光源氏の一生とその一族たちの様々の人生を70年余にわたって構成し、王朝文化の最盛期の宮廷の生活の内実を優艶に、かつ克明に描き尽くしている。光源氏の奔放な恋愛生活、女性遍歴を通し、地位、権力をかちえていく過程と、晩年にこれまでの罪の応報におののきながら、孤独な生活、出家、そして死を迎えることとなる。本文は宗教の角度から『源氏物語』を分析する。平安時代に本格的な仏教宗派成立した。日本仏教界に2人の天才が現れた、最澄と空海である。
さらに、『源氏物語』には仏教思想の影響が深く見受けられる。本文は主に、無常因果、宿命論から論じる。良いことであろう悪いことであろう、昔やったことは必ず何時か我が身にし返す、その応報は仏教で善因善果・悪因悪果という因果応報思想の体現である。光源氏は昔の罪に対する我が身への報いと堅く信じ、苦しんだ。これはまさに諸行無常と因果循環の最高の解釈であると思う。そして、彼の一生の運命は仏教の中の宿命であろうか。平安時代の人間、特に宮廷貴族は仏教典籍などを接触する機会が多いから、不満や失望の現世から逃げ、浄土への関心が高まり、極楽往生を願うことが盛んになった。これも『源氏物語』における様々な人物が出家を決意した原因である。
キーワード:源氏物語;仏教;諸行無常;因果循環;宿命
目次
中文摘要
要旨
第1章 はじめに-1
1.1 日本の仏教の発展-1
1.2 『源氏物語』の誕生-1
第2章 『源氏物語』の概要と文化背景-3
2.1 『源氏物語』の概要-3
2.2 『源氏物語』の文化背景-3
第3章 日本における仏教発展の歴史-5
3.1 日本仏教の歴史-5
3.2 聖徳太子と仏教-6
3.3 平安時代の仏教-7
第4章 『源氏物語』における仏教-9
4.1 出家-9
4.2 無常・因果-10
4.3 宿世観-11
第5章 おわりに-12
参考文献-14
謝 辞-15