中日文学作品における植物と登場人物の関係について
——『源氏物語』と『紅楼夢』を中心に
要 旨:中国と日本は隣国として、歴史上、様々な面で極めて密接な交流関係にあった。長年にわたる両国の交流史においては、戦争などのマイナス要素もあったものの、文学や思想における双方向的影響というプラスの側面も存在した。とくに、文学作品は、中日間における文化交流の一つの現れとして重要な役割を果たしてきた。古来、中日両国の文学作品は、多くの価値観を共有してきた。両国の多くの作者が、文学作品の中で植物と登場人物の両者を関連付けている点は、その一つの例である。それらの作品は植物の描写を通して、物語の流れを作り、登場人物の造形を浮き彫りとし、そして彼らの運命を暗示するのである。この点を理解することは、両国間の文学交流を促進する上で重要な役割を持つ。
本論文は『源氏物語』と『紅楼夢』という、両国の文学史上、極めて重要な影響を持つ文学作品を取り上げ、植物の色彩や生態と、登場人物の性格や運命との間の関係について、作中の具体的な用例をふまえ考察する。さらに対照分析の手法を用い、両作品における植物と登場人物の関係の異同についても分析する。本研究を通じて、そうした関係や異同を明らかにし、中国の日本語学習者と文学愛好者にそれらを理解させることができれば、両国間の文学交流に対し好ましい影響をもたらすものと期待される。
キーワード:源氏物語 紅楼夢 植物 登場人物 関係論
目次
要旨
中文摘要
1.はじめに-1
2.先行研究-1
2.1植物と登場人物の関係について-1
2.2国内外での両作品に関する研究の現状-2
3.両作品中の植物と登場人物の関係について-3
3.1色彩語の活用-3
3.2比喩手法の活用-5
3.3女性の人物造形と植物-6
3.4女性の地位と植物のイメージ-7
4.両作品中の植物と登場人物の関係における異同-7
4.1比喩手法と象徴手法における異同-8
4.2直接性と間接性における異同-10
4.3色彩語における異同-11
5.終わりに-13
謝 辞-14
参考文献-15