要旨
『十二国記』は、冒険と成長を題材とする歴史架空ファンタジーシリーズ小説である。その作者小野不由美は、小説で「天意で王を選ぶ」という奇妙な世界を構築している。小説の主題の天意とは、何なのかという問いがある。ここの天意とは、現実世界の「天意」や「運命」、そして「神諭」と同じである。同時に、この世界の女性は子供を産まないという設定がある。この設定の下で、作者は個性が鮮やかで魅力的な女性役を次々と作り出した。こうしたことからも、天意とは何なのかという問いは、小説の表主題しかないかもしれない。また、このシリーズ小説では裏主題がある。即ち、男女差別の源は何なのか、そして、男女平等と何なのかという問いである。
本稿は『十二国記』を中心に、この小説の女性像を分析し、小野不由美本人の女性観(即ち、女性生育に対する意見、女性があるべき人生に対する意見、及び男女平等に対する希望)を明らかにしたい。
作品の女性像は作者の女性観に基づいて創作されるものである。つまり、社会意識によって女性観が形成される。この作品の女性像はまさに小野不由美の自画像である。軟弱から強くなり、重苦しさから自由になり、無知から理知的になることは、小野不由美が女性に対する希望だけではなく、男女差別への抗議でもある。
キーワード:十二国記; 小野不由美; 男女平等
目次
要旨
中文摘要
1はじめに1
1.1研究目的と研究意義1
1.2先行研究2
2『十二国記』の成立3
2.1『十二国記』の構成3
2.2『十二国記』の世界観3
2.3『十二国記』の世界観での女性設定3
3四人の主人公の女性像4
3.1景王の中嶋陽子4
3.2「海客」の大木鈴5
3.3「元姫」の祥瓊6
3.4供王の珠晶6
4小野不由美の女性観8
4.1二つの世界の対比8
4.2四人の性格の比較9
4.3『十二国記』と少年漫画9
4.4『十二国記』と少女漫画11
4.5現実世界に対する希望 11
5おわりに13
参考文献14