要旨:言語は社会文化を反映する鏡である。異なる国の言語は異なる文化の特徴を表している。ある国の言語の表現方法からその国の文化伝統と民族特性を見出すこともできるはずである。
日本語の表現形式から見ると、日本人が授受表現を特に好むことがわかっている。日本語の授受表現は物の「引き渡すと受け入れる」という意味を表すことだけではなく、日本人の特有の恩恵意識を同時に反映している。恩恵行為を通じて、日本人は自分の感謝の気持ちを強調する一方で、それによってもたらされた他人の心理的負担をできる限り軽くする。日本人のその心理と考え方は、内部の仲良く続けることを求めようと努力する民族心理から生まれるものである。あげる人ともらう人の関係が近いことと疎遠なこと、あるいは上下関係によって、使う授受動詞も異なる。授受表現の分析を通じて、日本人は人とコミュニケーションする場合、「内」と「外」の関係をとても重視して、その同時に、強い人情観念を持っているということが明らかになってきた。
日本語の授受表現は三組の対応関係がある。それは世界中の言語の中でも珍しいことである。日本語の授受表現は物の授受関係だけではなく、行為の授受関係にも用いられる。それは日本独特の地理環境及び社会文化環境から生まれたものである。もしその恩恵関係に含んでいる文化原則と歴史の根源を正しく把握できないと、授受表現を正しく把握し、活用することもできないのであろう。そして、日本人の世渡り方もうまく理解できないし、自分の本心を正しく伝えることもうまく進められないのであろう。
授受表現は日本語文法の一部の特色である。日本語で、物の授受関係を表す動詞がたくさんある。しかし、その中で「やる、あげる、くれる、もらう、差し上げる、くださる、いただく」という七つの動詞が授受動詞だと呼ばれる。そして、「差し上げる、くださる、いただく」は「やる、あげる、くれる、もらう」それぞれの敬語の形である。本稿はその三組の授受動詞の使い方の分析を通じて、その中に含まれた日本人の特有の恩恵意識を検討してみよう。
授受表現を正しく使えるようになるために、まずは、授受表現に含まれた恩恵意識を深刻に理解しなければならない。そのゆえに、日本人の特有の恩恵意識が育った地理環境、社会文化環境及び歴史環境などをうまく把握することが必要である。そうしたら、異なる自然文化環境による意識観念の生み出した異文化ギャップも減されるのであろう。授受表現を合理的に正しく用いれば、人との付き合いも上手く進められるのであろう。そして、良い人間関係の維持にも重要な役割を果たしている。もし恩恵関係を軽視して、不適切に授受動詞を使ったら、自分の本意を確実に相手に伝えられないことだけではなく、誤解を招いてしまう可能性もある。
キーワード:恩恵意識 授受表現 授受動詞
目次
要旨
中文摘要
はじめに1
1.恩恵意識とは1
1.1恩恵意識の意味1
1.2恩恵意識の起源1
1.2.1自然環境との関係1
1.2.2稲作文化から2
1.2.3儒学からの影響2
2.授受表現における恩恵意識2
2.1授受表現の定義3
2.2授受表現から見る日本人の恩恵意識3
2.2.1授受表現について3
2.2.1.1~てやる/あげる/差し上げる4
2.2.1.2~てもらう/いただく5
2.2.1.3~てくれる/くださる5
2.2.2恩恵意識に基づく授受表現6
2.2.2.1「~てやる/あげる/差し上げる」について6
2.2.2.2「~てくれる」、「~てもらう」について6
3.恩恵意識について6
3.1日本人の恩恵意識に関する認識6
3.2恩恵意識の影響7
3.2.1積極的な影響7
3.2.2消極的な影響7
3.3中国への参考7
おわりに8
参考文献9
謝辞10