要旨:『徒然草』は内容が豊富な随筆である。自然を楽しんだこと、禁中の物事を記したこと、歴史に考証したこと、爱情に対して目覚めること、宗教に理解したこと、芸術を鑑賞したこと、政治について考えたこと、人間の本質を分析したこと、先人を懐かしんだこと、理想的な世界への憧れなど、様々な内容が書かれた。厳しく批判したこともあれば、奇妙な笑い話もあった。学者たちは『徒然草』で先代の文学、中世の美学、儒家思想、老荘思想、仏教思想などが現れたと認め、吉田兼好の美意識、無常観、隠逸思想などを研究してきた。これらの先行研究で、学者たちは多かれ少なかれ、吉田兼好の批判意識に触れた。批判したことは例えば、当時の政治の闇、贅沢の現象、色欲、わざとらしい芸術、嘘、デマ、迷信、暴力、冷たい人間の心、教養がないこと、時間を浪費すること、技能を専攻しないことなどである。そして、「愚か」という言葉が時々現れた。批判意識の激しさは明らかであろう。
本論は主に、『徒然草』に現れた「名利欲」、「色欲」、「迷信」を批判した内容を検討している。そして、吉田兼好の批判意識を荘子の思想と結び付けて、比較して、分析してみた。荘子の「一切斉同」、「心斎」、「命長ければ辱多し」などの思想は吉田兼好に理解され、吸い込まれたと考えられる。しかし、吉田兼好は全面的に受け入れたわけではないと筆者は考える。たとえば、「寿命」について、吉田兼好は自分の見方を提出し、荘子の「無為自然」という思想とは相違が見られる。
キーワード:徒然草 吉田兼好 批判意識 荘子思想
目次
要旨
中文摘要
はじめに1
1、批判意識の定義及び先行研究1
1.1、批判意識の定義1
1.2、『徒然草』における批判意識の先行研究1
2、創作背景2
2.1、歴史的背景2
2.2、作者の経歴2
3、『徒然草』における批判意識の表現3
3.1、名利の追求を批判したこと3
3.2、色欲を批判したこと4
3.3、迷信を批判したこと5
4、荘子思想との比較6
4.1、「まことの智」について6
4.2、「まことの人」について7
4.3、死生観について8
おわりに9
参考文献10
謝辞