要旨:周知の通り、日本では志賀直哉が「小説の神様」と呼ばれていた。作者は自分の生活に基づいて小説を創作されたと言われている。特に私小説と心境小説の創作作品は日本近代文学史で高い地位を与えられていた。
志賀直哉が創作生涯の中で、『和解』など数多くの作品にて父親との関係をめぐって書かされたのだ。彼は幼年時代から母親と別れ、その後ずっと祖父母と住んでいた。青年時代に入ると、生母と死別した。作者の文学創作にとって、母親というのも不可欠な存在である。年をとった志賀直哉は『白い線』と『母からの手紙』を通じて、素直に生母への思いを表現した。
振り返ると、志賀直哉は作家として『母の死と新しい母』に書かれたように、母の死を心の底から悲しんだことが分かった。しかし、直接に母親と関わっている作品は意外に少ない。それても、処女作として発表された『網走まで』において、亡くなれた生母銀への慕う気持ちが強く伝わってきた。それに、「母親」という登場人物の創作に影響を及ぼしたことが分かった。同時、作品に隠された「父親」への嫌い傾向も見られた。それはフロイトの心理学理論によって、オイディプス情緒の典型的な表現である。
なぜ『網走まで』という作品にそういう表現が存在するのかという疑問を抱きながら、本論文は心理学者フロイトの精神分析方法論を通して、『網走まで』を調べ、それに関する表現をまとめた上で、登場人物達の関係とオイディプス情感を研究・分析してきた。本課題に関わる先行研究を踏み出して、筆者なりの研究を重ね、作者志賀直哉にはオイディプスという情緒を有することは結論に至った。作者志賀直哉は年を取るたびに、だんだん父親への理解を深め、オイディプス情緒も次第に消え去っていた。それと同時に、作者は母親への情感も直面できるようになり、人々を深く感動させる作品も世に創り出したのである。それこそ、『網走まで』の延長になる表現であると思う。
キーワード:志賀直哉 『網走まで』 オイディプス表現 精神分析学的方法論
目次
要旨
中文摘要
はじめに-1
1.母親への肯定と父親への否定-1
1.1フロイトのオイディプス理論と本論文-1
1.2『母の死と新しい母』について-2
1.3『暗夜行路』における作者の態度-3
1.4『白い線』から表れた情感-4
2.『網走まで』におけるオイディプス表現-4
2.1母性への慕う表現-5
2.1.1弱い「母親」の女性像-5
2.1.2わがままな「男の子」とオイディプス情緒-6
2.1.3フロイトの理論と「赤ちゃん」の乳を飲む動作-6
2.1.4曖昧な感情を持つ「私」-7
2.2作品に隠された「父親」のイメージ-8
3.作者志賀直哉のオイディプス傾向-9
3.1祖母と継母への感謝の気持ち-9
3.2生母への慕う気持ち-10
3.3志賀直哉と父親との関係-11
おわりに-12
参考文献-13
謝辞-14