中国人日本語学習者の授受表現の習得と誤用分析について
——江蘇大学日本語学科の学生を例に
要旨:授受表現は日本語学習者にとって、重要であるのと同時に難解とされる文法項目の一つである。日本語において授受関係は、「物品の授受」と「行為の授受」を通して表される。授受表現は中級レベルの難しさでありながらも、実際にこれを用いる際に、日本語学習者はしばしばミスを犯すため、意図的にこの文法を避ける傾向が強い。この誤用を引き起こす原因が一体何であろうか。また、授業でどのような教授法に立てば、日本語学習者に誤用を認識させうるのであろうか。以上の問題意識から、筆者は中国人日本語学習者の授受表現の誤用とその原因について江蘇大学日本語学科の学生を例に検討してみようと思う。
本稿の構成は以下の通りである。
「はじめに」では、本研究の目的と方法などを概観する。続く「先行研究」において、授受表現に関する理論をまとめた上で、授受表現の定義を確認し、本稿の研究立場を明確にしたい。「本論」では、先行研究で提示された代表的な授受表現と、ビデオからの自然な発話場面を抽出して作成したアンケートをもとに分析を行った。このアンケート結果を集計し、それぞれ視点制約、人称制限、恩恵意識という三つの面から、若干の検討を加えた。そして、中国語の兼語式文との対照から日本語学習者の母語の干渉を考える。「まとめと今後の課題」では、各章の分析をまとめ、残る問題点と今後の研究方向について付言する。
キーワード:中国人日本語学習者 授受表現 習得 誤用分析
目次
要旨
中文摘要
1.はじめに-1
2.本稿における授受表現の定義-1
2.1先行研究-1
2.2授受表現の定義-2
3.具体的調査方法-3
3.1調査協力者と調査目的-3
3.2文完成タスクとアンケートの調査方法-3
4.正答率の分析-4
4.1正答基準-4
4.2正答率-4
4.3正答・誤答の分析視点-5
4.4視点制約-6
4.5人称制限-7
4.5恩恵意識-8
5.中国語兼語式文との対照-9
5.1中国語の兼語式文-9
5.2授受表現との異同-10
6.終わりに-12
謝辞-13
参考文献-14
付表-15
アンケート調査-15
正答-16