要旨:日本の作家の作風は大部分極めて細やかである。そのような作品を読むと、声の優しい女が耳元でささやいているように感じられる。その中でも特に昭和初期に有名な新心理主義派の作家である堀辰雄の作品は、哀婉であり、かつ綺麗さが感じられる。
『風立ちぬ』は作者堀辰雄本人の体験をもとに執筆された代表的作品である。作者は現実の中の自分と婚約者の矢野玲子のストーリーを小説の中に書き入れ、主人公が婚約者の節子と静かで美しい自然に囲まれた高原での療養を背景として、重い病に冒されている婚約者に付き添う「私」が彼女の死の影におびえながらも、二人で残された時間を支え合いながら共に生きていて、二人だけのロマンチックな恋の世界を描いている。男女の主人公は一緒に生きる幸せを求めながら、死亡に対する不安の苦しみとも向き合わなければならなかった。この小説は人を驚かす場面はないが、なかなか味わいが尽きない作品だと思われる。この作品のストーリーは長くないが、構文のいずれもごく繊細であり深刻な悲しみと哀れな雰囲気が溢れている。堀辰雄の一生を振り返ってみれば、地震の中で母親を失い、恩師の芥川龍之介も自殺で亡くなり、婚約者の矢野玲子も重病で亡くなった。死亡が彼に与えたショックがいかに大きかったのか言わなくても分かるだろう。但し、それらの死との遭遇で彼も平気で死に直面することができただろう。従って、この死のテーマと関わる小説の中で、作者の堀辰雄はわざと男女主人公の身にあった辛さを描いておらず、二人が死を前にして時間を超越した生の意味と幸福を主に描いている。
本論文は小説における時の流れやその場面の移り変わりをめぐり、小説の内容について分析し、作者の堀辰雄の繊細且つ明暗交錯の心理描写手法を習い、作者のそういう設定の絶妙さを感じると同時に、作品を解析することによって、作品に描かれた精神的世界を体験することができ、さらにそれが不朽の名作としての真の魅力を深く討議できる。
キーワード:堀辰雄;風立ちぬ;時間;空間
目次
要旨
中文摘要
はじめに-1
第一章 『風立ちぬ』における時間設定-2
1.1、主人公の「私」による時間設定-2
1.2、「節子」の病状による時間設定-2
第二章 『風立ちぬ』における空間設定-3
2.1、環境描写-3
2.2、人物の対話・表情・心理の描写-3
第三章 時間と空間の完璧な結合――各章から分析-4
3.1、序曲—過去に戻る-4
3.2、春—新しい始まり-5
3.3、風立ちぬ—苦境に陥る-6
3.4、冬—記憶の中の恋人-9
3.5、死のかげの谷-10
第四章 小説から学ぶこと-11
4.1、生きている人への啓発-11
4.2、中国文化界への啓発-11
おわりに-12
謝辞-13
参考文献-14