要旨:『古都』は戦後川端文学における特例とされ、京都の独特な人文風土に自我の思 考を託し、純粋な京都人たちのストーリーを語った。本論文では、『古都』とその 周辺の文献を考察した上で、さまざまな分析を行い、川端は『古都』における日本 の伝統美、物事・人物にどのように自身の人生への思考を託したか、また、戦後の 川端文学における独特性に『古都』がどのような役目を果したか、作者の精神世界 との関連を明らかにした。
本論文では、まず、『古都』の発表、翻訳と研究状況を紹介してから、『古都』を 書く前後の川端に関する資料をまとめ、創作状況と関わる戦争関連の資料を含めて 分析し、『古都』が前後の作品の基調と全然違う原因を求めた。
次に、『古都』に見る川端文学の伝統美と自我への思考をそれぞれ伝統的な作風 と素材、作品の物事・人物に託した自我への思考に分けて分析を試みた。川端は『古 都』の物事や人物を通じて、自然の生命と文学者の運命を関連づけ、常と無常、妥 協と堅持の矛盾が戦った末、最後に無常の世界を受け入れ、淡い雪の日の朝、苗子 は振りかえらずに自分の道を辿って行った。そのように、川端は自分が選んだ文学 の道を辿っていくことを語っている。
第三に、川端の精神的故郷――京都の風土・民俗を描き、異文化の影響を例に、『古都』の独特性が育む社会背景を分析した。当時の京都は伝統文明と現代文明と もに受容している大都市であるが、川端としては、京都に深い愛着があるからこそ、 異文化を輸入しなかったら、復興できないことを恐れながら、伝統文化の喪失に心 を痛めた。
第四に、『古都』の基本構造を紹介した後、作品に見られる川端の憧れの愛情を 親子間と兄弟間の愛情と男女の間の恋心に分けて考察した。『古都』の中で、親子 と兄弟の間の伝統的な愛情と男女の間の恋心は、川端にとって憧れものであって、『古都』の人物を寵愛しているからこそ、その調和の取れた美を壊したくなかった ため、全く汚れのない清純且つ優雅な恋心と親子・兄弟間の感情を描いた。
本論文は、以上の四つの部分に分けて考察し、分析してきた。つまり、川端は『古 都』の日本の伝統美、物事・人物にどのように自身の人生への思考を託したか、戦 後の川端文学における独特性に『古都』がどのような役目を果したか、作者の精神 世界との関連に重心を置いて分析し、明らかにした。本論文は『古都』が戦後の川端文学における特例として扱われた原因を解明した上、川端自身が明るく、優雅な 筆致で、京都の物事・人物に託している自我への思考、伝統文化と異文化への愛情、 そして、理想化された愛情という三つの方面から、彼の精神世界をリアルに再生し た。この試みがこれから行われる戦後川端文学の研究に何らかの参考になれば幸い である。
キーワード: 『古都』 伝統 思考 愛情
中文摘要:《古都》常被称为战后川端文学的特例,京都独特的人文风土中寄托着作者对自 我的思索,述说着纯粹的京都人的故事。拙论在对《古都》及其相关文献进行考察的 基础上,阐明了川端在《古都》中所表达的传统美,分析了事物、人物中寄托了怎样 的人生思索,并进一步明确了在表现战后川端文学的独特性方面《古都》所起的作用 以及作品与作者的精神世界之间的关联。
序论部分首先介绍了《古都》的发表、翻译及研究状况。然后,在总结川端撰写《古都》前后的相关资料的基础上,结合其创作情况和战争相关的资料进行分析,以 探求《古都》与其前后作品风格迥异的原因。
其次,试着把《古都》所展现的川端文学的传统美与自我思索分为传统的文风与 素材、在作品中的人与物中寄托的自我思索这两方面来进行分析。《古都》中的人与 物诉说着自然的生命与作为文学家的命运的交织,在“常”与“无常”、妥协与坚持 的矛盾斗争之后,坦然接受“无常”的世界,正如苗子在下着细雪的清晨义无反顾地 踏上自己的人生之路一样,川端也坚持了自己选择的文学之路。
第三,通过描绘川端的精神故乡京都的风土与民俗,并结合受异文化影响的具体 例子,对孕育着《古都》独特性的社会背景进行分析。当时的京都是一个融合着传统 文明与现代文明的大都市。而对于川端来说,正因为他深爱京都,所以他既怕因没有 异文化的融入而无法复兴,又为传统文化的丧失而心痛。
第四,在介绍完《古都》的基本结构后,把作品中川端所憧憬的感情划分为亲子 情·手足情和男女间的恋情来进行考察。《古都》中传统的亲子与手足亲情和男女间 的恋情是川端所憧憬的,可以说正是因为他对《古都》中的人物的宠爱,所以不愿破 坏这和谐之美,才勾画出了纤尘不染的清纯而优雅的亲情与恋情。
拙论主要从以上四个部分系统地进行了考察分析,从而阐明了川端在《古都》中 所表达的传统美,剖析了人与物中寄托的人生思索,并明确了在表现战后川端文学的 独特性方面《古都》所起到的作用以及作品与作者的精神世界间的关联。小论在阐明《古都》之所以常被看作战后川端文学的特例的原因的基础上,再深入剖析了川端以 其明快而优雅的笔调从其寄托在京都的事物与人物中的自我思索、对传统文化与异文 化的感情以及理想化的亲情与恋情这三个方面出发,真实地再现了他的精神世界。这 若能成为今后战后川端文学研究的一点参考的话,我将深感荣幸。
关键词: 《古都》 传统 思索 情感