要旨:時代の流れの中で、日本は産業資本主義からポスト産業資本主義への大転換期にさしかかっている。しかし、日本の会社がその大転換期をうまく対応できないため、経済が低迷期におちっていることになっている。日本は、この時期を生き抜くためには、新しい資本主義にふさわしい形にしてなければならない。本稿では、日本型資本主義下、もっとも発達した会社の種類である株式会社を研究対象にしたい。株式会社に特有な「法人」という概念(法律上でヒトと扱われているモノである)を踏まえて、株式会社がいったいどのようなものかということを解説したい。そして、大元方の世襲制度、つまり日本の「家」制度から、日本型資本主義を辿り、日本の株式会社が「モノ」になるか「ヒト」になるかということを論じたい。また、ポスト産業資本主義の時代に、日本の株式会社では、「モノ」性による「資金資本」の力が強いか、「ヒト」性による「人的資本」の力が強いかということを研究したい。最後に、ポスト産業資本主義において会社で働くということを考えてみたい。
キーワード:資本主義 会社 大元方
企業の中で、このような組織特殊的な人的投資が積極的になされればなされるほど、その収益性が高まっている。だが、それと同時に、そのような組織特殊的な人的投資によって編み上げられていく企業組織は、「文化」としかいいようのない個性を持つようになる。なぜならば、企業組織といえども、人間の組織である。人間の組織はまさにそれぞれが異なった目的や能力や信念や感情をもった人間の組織であることにより、工学的な意味での最適性とは無縁なものであるから。そして、今度はこの企業文化が、企業組織の中での人間の活動のあり方を構造的に規定するようになる。人々は、その文化に適合するための人的投資をしなければ、企業組織の一員として活動することができなくなってしまうのである。