要 旨:第二次世界大戦後、世界の金融業界の環境変化が著しくなった。金融の自由 化や国際化の進展に伴って金融機関の国際競争が激化する中で、合併や買収を 含む銀行の再編が一国の金融競争力を向上させる有効的な手段と見なされた。 合併は経営のリストラクチュアリングの有力な手段であり、国民経済的にも効 率性が増大するほか、その利益は規模の経済性、店舗網の充実、人材の確保、 あるいは範囲の経済性、経営へのインパクト、金融技術の移転などが挙げられ 、 これらを通じて資源の再分配効果が得られるとも理解されていた。したがっ て、銀行間の M&A(銀行の合併と買収)は、いまや世界的な傾向になってい る。
一方、経済大国の日本でも、欧米系銀行再編の流れに乗り、銀行 M&A のピークを迎えてきた。日本は、バブル経済が崩壊した1990 年代以来、長期的な 不景気に苦しんでいた。経済低迷から脱出するために、金融機関の社会的機能 の重大性が大いに認識され、銀行業における新たな合併や提携が発足した。現 在、国内にあるそもそも 20 軒あまりの大手銀行が三菱東京 UFJ ファイナンシ ャル・グループ(東京三菱銀行と UFJ 銀行の合併)、三井住友銀行(さくら銀 行と住友銀行の合併)、みずほファイナンシャル・グループ(富士銀行、第一 勧業銀行、日本興業銀行からなる)―3 大大手金融グループに統合された。こ うした合併や提携を通し、まず市場シェアを高めて多角化経営を実現した。ま た、日本国内の金融改革も進められ、それにより、日本の経済が回復の道へと 歩き出し、金融の自由化や国際化も推進してきた。しかしながら、銀行 M&A に現れた失業率の高さや銀行独占の危険などの問題は決して無視できるわけ ではないと考えられる。
ところで、日本と同じくアジア圏にある中国でも、銀行業における合併と提 携などの再編が進んできており、中国の金融市場も大きな変貌を見せている。 しかし、経済などの発展が進む一方で、中国の銀行は、体制上の問題を解決し 、 時代の要請に応えるために改革を迫られている。両国の銀行業の再編における 合併、買収を考察、研究することは、中国の金融システムにおける改革にとっ て参考になるものが多いのではないかと思われる。本稿では、銀行業におけるM&A に関する理論を取り上げ、特に 1990 年代後半からの日本における銀行 M&A を中心に銀行業再編の発生と発展を振り返ることを通し、日本の銀行業 再編の特徴や具体的なやり方、そして M&A がもたらした影響などを詳しく分 析する。また、2007 年まで中国における銀行業 M&A の情況について、更に WTO 加盟後、国内外から挑戦される中国の銀行が直面した問題並びに銀行 M&A に現れた問題点を述べてみる。それと同時に、日本の銀行 M&A との比 較によって、日本の経験を学び、中国における銀行 M&A の今後の展開の方向 及び新しい分野で日本の銀行業と提携することについて検討した。
キーワード:銀行業再編、M&A、日本の銀行 M&A、中国の銀行業